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ヨーロッパ各国のワイナリーを巡ってきた経験から、日本で行う酒蔵ツーリズム・ワイナリーツーリズムを成功させるポイントについてご紹介します。
「酒蔵ツーリズムに興味があるけれど、何から始めれば良い?」
「海外のワイナリーツアーってどういうもの?」
という疑問がある方は、そのヒントを見つける手助けになれば幸いです。
インバウンド対策のひとつとして、酒蔵ツーリズム・ワイナリーツーリズムの実施や酒税免税店の運営などを検討してみませんか?
目次
1.ヨーロッパのワイナリーを巡ってみて、一番に思い出すこと
2.お客様に「またここに来たい!」と思ってもらうために必要なこと
3.アフターコロナ訪日観光客のニーズに応える:酒造ツーリズムの商機とは?
4.日本に酒蔵とワイナリーは、どのくらいの数あるの?
5.インバウンド向けの酒税免税制度について
6.酒蔵ツーリズムを成功させるポイントとは?
①事前に酒蔵ツーリズムの対象顧客の情報をヒアリングする
②多言語対応する
③酒類の生産者や地元の人たちと交流のチャンスをもうける
④酒蔵ツーリズムの真骨頂:地元の美味料理も提供
⑤酒蔵ツーリズムなら絶対必要!しっかり試飲
⑥フォトジェニックを意識する
⑦お土産を意識した酒類関連の商品やギフト用のパッケージがある
⑧InstagramやFacebookへのいいね!やフォローなどをしてもらう
⑨酒蔵ツーリズム開催後:参加者の感想を確認し、改善に活用する
7.まとめ
1.ヨーロッパのワイナリーを巡ってみて、一番に思い出すこと
こんにちは!yumiです。
私は過去に数年ヨーロッパに住んでいたことがあり、在住時にはヨーロッパの美味しいお酒と食べ物を求めて、フランス・イタリア・スペイン各地のワイナリー巡りをしていました。
大企業のものから家族経営のワイナリー
ふらっと通りすがりに寄ったもの
個人でガイドさんを雇って回ったもの
家から電車でふらっと行ける都心に近いワイナリー
イタリアのアグリツーリズモ
シャンパンマラソンやメドックマラソン(給水所でワインを飲みながら走るフルマラソン)への参加などなど数知れず。。
どれもまた再訪したいなと思うのですが、ではそれらの何が一番よかったのでしょうか?
思い返してみて、一番強く思い出すことは何でしょうか?
それは、”現地の人たちとの交流”です。
ワインが好きで、現地の食事を楽しみたいという思いでその土地を訪れました。
もちろん、ワインや食べ物は美味しく自然も豊かで素晴らしい時間を過ごしたという前提がありますが、一番に思い出すのは現地の人達に温かく迎え入れてもらえて楽しく過ごした思い出です。
旅行前の目的であったワインや料理のことは、実際はその次なんです。
現地に行かないと体験できない経験は、自分だけの特別な、唯一無二のものになりました。
2.お客様に「またここに来たい!」と思ってもらうために必要なこと
そして、現地の人たちと交流したことで私の中に”つながり”や”思い入れ”ができ、その気持ちが「再訪したい」という思いに繋がっているのだと思います。
ワインが美味しくて食べ物が美味しくてのんびりできた…だけだと、「また行きたい」と思って更に実行にうつすところまで持っていくのは正直難しいです。同じような美味しいワインや食事は、身近にもあるからです。
例えばホテルやレストランでも、気持ちのいい接客をしてもらえると、またそこで素敵な時間を過ごしたいと思い、再訪したい!という思いに至ります。
それらは、そこに行かないと経験できないことですよね。
やはり、人とのつながりや良いコミュニケーションは、どの業種でも顧客満足度を上げてリピーターやファンになってもらうには重要であると考えます。
特に、コロナ禍でリアルなコミュニケーションが以前より希薄になっている中では、より重要となるでしょう。
日本を訪れる外国人の方たちも、最初は日本の食べ物や文化、観光地などに興味をもって来られる人が多いと思います。
しかし、実際行ってみて「また行きたいな」と思わせるのは、私と同じように、現地の人たちと楽しく交流した特別な経験なのではないかな、と思います。
旅先での素敵な思い出が「また行きたい!」という気持ちに繋がっていきます。
3.アフターコロナで訪日観光客のニーズはどう変わるのか?酒蔵ツーリズムの商機とは?
世界各国でコロナに対する規制緩和が進み、アフターコロナをどう捉えていくか、行動にうつすべき局面にすでに入っています。
少子高齢化など様々な問題を抱える中で、国内の消費は今後も低迷していくと予想されています。これからの日本の成長にはインバウンドは必要不可欠であり、多くの外国人観光客に訪れて日本を知ってもらうことは、これからの日本の発展に直結すると思います。
そんな日本に来たからこそできる、現地の人たちとコミュニケーションをとるツールとして、酒蔵ツーリズム・ワイナリーツーリズムを私は訪日観光客に推したいと思います!
アフターコロナで外国人観光客のニーズは変化しました。密を避けた少人数でのツアーが好まれたり、旅先の選定にもサスティナブル、衛生面や安全面を一番に重視したり…。
コロナ禍でストレスの多い生活の中、セルフケアやストレスの解消などにより多くの時間とお金を費やしたいという傾向は、今後も高まるだろうと言われています。
実際、密を避けてゆったりと過ごせる、自然豊かな地方の観光地が世界からも注目されています。
まさに、酒蔵ツーリズム・ワイナリーツーリズムに参加する旅というのは、それらを実現可能とする、外国人観光客のニーズに合ったものになるのではないでしょうか。
4.日本には酒蔵とワイナリーの数ってどのくらいあるの?
さて、現在日本にある酒蔵やワイナリーの数をご存じですか?
調べたところ、このような結果となりました!
※参考:酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和2年度調査分)|国税庁 (nta.go.jp)
どうでしょう?私は、全国津々浦々にはこんなにもワイナリーや酒蔵があったんだなと驚きました。(そして、まだ知らない日本のお酒がこんなにも…!とわくわくしました)
全国のワイナリーの数は、前回調査分(平成31年)より38場増えているそうです。上位3県で全体の49.3%を占めています。
全国の清酒製造業者数の内訳ですが、大企業が5者、中小企業が1,203者、個人事業者が44者となっており、中小企業がほとんどでした。
この中ですでに酒蔵ツーリズムやワイナリーツーリズムを実施されている場所は全国に点々とありますが、全体の割合からいくと多くはないと思います。
本業である酒類製造を行いながらお客様向けにツアーを行うということは、片手間ではできないということもあるでしょう。また、実際の製造エリアなどを見学に利用するためには、注意しなければいけない点なども多く、状況によってはハードルが高くなると思います。訪日外国人向けには多言語対応も課題となってきます。
大なり小なり何かを始めるということは、精神的にも体力的にもエネルギーが必要になりますよね。
しかし、酒蔵ツーリズムのやり方にも色々あります。短時間のものからじっくり案内するもの、レストランや宿泊施設などとパッケージプランにして開催するものやオンラインツアーなど、種類や方法はたくさんあります。
まだ酒蔵ツーリズムやワイナリーツーリズムを実施されていない酒蔵やワイナリーの方、一度検討したけれど何か理由があって実施できなかった方、
インバウンドによる収益を見込みたい方に、この記事が少しでも検討するきっかけとなれば幸いです。
5.インバウンド向けの酒税免税制度について
インバウンド向けの酒税免税制度というものがあるのをご存じでしょうか?
訪日観光客に対して、通常の免税店は消費税の免税のみを行っています。
しかし、ワイナリーや酒蔵など醸造所の敷地内に構えるor近隣の売店が免税店となった場合には、消費税だけではなく酒税も免税して販売することができるんです!※自社製品を販売する場合のみ
この制度は、酒蔵(地方)を訪れる外国人観光客の誘致と旅行消費拡大を目的に、平成29年度税制改正にて創設されました。
※酒税免税の詳細はこちら:酒税免税について | 免税店.jp (taxfree.jp)
酒税はお酒の種類によって違ってきますが、消費税にプラスして更に酒税が免除されるので、外国人観光客にとっては大変お得な制度です。集客と売上アップの両方が見込めます。
通常の免税店にはない、醸造所限定の特別な制度となっています。
※この制度を利用するには、輸出物品販売場(免税店)の登録と、輸出酒類販売場の登録が必要となります。こちらは各事業者の所轄税務署に申請を行います。すでに免税店登録をされている場合には、輸出酒類販売場の登録のみ行います。弊社ではこれらの手続きを無料で承っております。→詳しくはこちら
6.ヨーロッパのワイナリーから学ぶ、酒造ツーリズムを成功させるポイントとは?
①事前に酒蔵ツーリズムやワイナリーツーリズムの対象顧客の情報をヒアリングする
ツアーを行う前に、参加者からいくつか情報をヒアリングしておくことは重要です。
例えば、
・どの国から来たのか(出身はどこか)
・日本(またはその土地)に来るのは何回目なのか
・なぜツアーに参加しようと思ったのか
・ツアーでどんな話を聞きたいか
など、事前に聞いておいてツアーの中で紹介したり話に触れれば、相手との心の距離も縮まってよいコミュニケーションを図る手助けになります。
冒頭でも説明しましたが、現地の人たちとのコミュニケーションも、思い出深い旅路には必要であると考えます。
短いツアーの中で相手と信頼関係を築けられれば、顧客満足度がアップするだけでなく、結果的に色々なメリットに繋がっていきます。
・帰国後に参加者が口コミで広めてくれる
・SNSなどへの口コミを書いてくれる
こういった参加者の口コミは、非常に重要な戦力になります。
また、国によって価値観や考え方は違います。日本人が観光客のためを思って考えたことでも、相手の外国人にはミスマッチである場合もあると思います。その差をなるべくなくして満足してもらえるツアーに近づけるためにも、相手の情報は詳しくヒアリングしたいところですね。
②多言語対応する
ヨーロッパのワイナリーで共通してすごいなと思ったこと、それはどこのワイナリーでも英語がスムーズに通じたことです。
ワイナリーツアーを専門に行っているツアーガイドやワイナリーのスタッフの方、生産者の方は皆、英語を流暢に話せたので、質問がある場合も直接聞くことができとても良かったです。色々とワイン以外のお話もできて、楽しかったことをよく覚えています。家族経営の場合、経営者の方が高齢で英語を話せない場合でも、そのお子さん達が英語で対応してくれてコミュニケーションがはかれたこともありました。
多言語対応については費用や時間もかかるため、中々すぐに手をつけられない部分だとは思います。
しかし、インバウンド向けに見学ツアーを行う場合には、多言語対応は必須となってきます。
まずは会社のホームページや掲示物、配布資料などできるところからインバウンド対策を始めてみることをおすすめします。
見学ツアー専門のガイドの方を採用するという方法もあるかと思います。外国人観光客で行う少人数のツアーなどオーダーメイドで設定し、価格設定もそれに合ったものをすることも可能です。
何事も最初から成功するということは難しいので、試行錯誤しながら一番良い方法を模索していきましょう!
③酒類の生産者や地元の人たちと交流の機会を提供する
私がイタリアのトスカーナ地方で訪れたバローロワインのワイナリーでは、経営者のいかにもイタリアのマンマという感じのお母さんが有名なソムリエでした。
<イタリアのマンマのソムリエからワインのレクチャーを受ける>
お母さんはイタリア語しかわからなかったのでお互い言葉はわかりませんでしたが、笑顔やジェスチャーだけでも交流を深められて、すごく温かく歓迎してくれたのがわかりました。
<美味しいパンと生ハムとチーズとワインのマリアージュは極上です!>
生ハムやチーズ、クラッカーもどっさり、ワインもどんどんついでくれて、テーブルについて一緒に食事しているような試飲会でした。特別なおつまみではないのですが、そうやって食べた生ハムやクラッカーはとても美味しかったなと今でも思い出します。
<ワイナリーではワインの詳しい説明をしてくれます>
イタリアではサルディーニャ島で漁師さんの船に乗せてもらって小さい島々のビーチを巡ったこともあるのですが、その時のランチは船の上の大鍋で、漁師さんがパスタを作ってくれたんです。具はミニトマトだけというとてもシンプルなパスタでしたが、船上で皆で食べると特別美味しく感じられて、そこでの交流も忘れられない思い出です。
フランス・スペインのワイナリーでも、同じように地元の人たちと色々交流しました。やはりそのことを思い出すと、もう一度会いに行きたいなぁと強く思います。
地元の人たちと良い交流ができれば、それは旅を思い出深いものにして、さらにファン・リピーターになってもらえる非常に重要なポイントとなるはずです。
④酒蔵ツーリズムの真骨頂!地元の美味しい料理、食べ物とのマリアージュを楽しむ
<買ったワインと地元のエコ生産された美味しいポテトチップもテラスで楽しんでしまいます>
先ほど食べ物についてお話しましたが、美味しいワインには美味しい食べ物が必要です。
その土地ならではの郷土料理や、ワインに合う日本食や日本のおつまみなどを紹介して、実際試食できると喜ばれるでしょう。そしてその場で購入して持ち帰れるものだとなお良いですね。
地元の美味しいお店やお土産屋さんを紹介したチラシ等を作成するのも良いと思います。特に見慣れないメニューだと内容や量がわからず迷ってしまったりするので、おすすめのメニューや内容について記載されていると親切ですね。(昔ベルギーのブリュッセルのレストランにて、生のムール貝がメニューにあったので頼もうとしたらお店のおばちゃんに「それはやめておきなさい」と言われたことを思い出します。)
⑤酒蔵ツーリズムなら絶対必要!しっかり試飲ができる場を設ける
せっかく来たのだから種類の違うお酒をたくさん試飲したい!というのが訪日観光客の方々の本音です。
見学ツアーの中で無料の試飲を設定したり、お酒の種類が多い場合にはグラス1杯を安めの値段で提供するなど、色々試せると楽しいですし購買意欲アップにも繋がります。
⑥フォトジェニックを意識する
フォトジェニックとは"写真写りが良い"ことは指します。地元の方には普段見慣れた場所でも、外国人観光客にとっては物珍しかったりするものです。日本風の庭園、盆栽、酒造りの道具、日本家屋、扇子、着物、草履など全てが新鮮で興味を持ってくれるかもしれません。インスタグラムやTikTokなどのSNSに慣れている若い方々の意見を取り入れるのも参考になりますよ。
インターネット・SNSの普及により、世界中のどこにいても探したいお店や観光地の情報などがよくわかるようになっています。
ハッシュタグの表示や、見学するスペースなどにフォトジェニックを意識した小物などがあると、観光客はそこで撮った写真をSNSなどで発信してくれるので、自然と知名度アップに繋がり集客を図れます。
日本や酒蔵を意識した撮影スペースを作ったり、ツアーの中で参加者と生産者で集合写真を撮るようにするのも良いですね。
<ヨーロッパではよくある素敵な飾り窓も日本では中々見ることができません>
<ヨーロッパのワイナリーらしく、葡萄がモチーフに使われているドア飾り>
<ヨーロッパのワイナリーの素敵なテラスの空間は日本なら縁側でしょうか>
<ヨーロッパのワイナリーはワインのボトルも素敵なインテリアでした>
スペインのワイナリーに宿泊した際は、ホテル全体がフォトジェニックで写真をたくさん撮りました。葡萄のモチーフがとてもおしゃれでした。
フランスのボルドーワインのワイナリーはシャトーと呼ばれ、どこも建物が豪華で美しかったです!
<フランスのワイナリーの素敵なシャトー、まるで物語に出てきそうです>
<お庭もとても素敵でした>
⑦お土産を意識した酒類関連の商品やギフト用のパッケージがある
イタリアミラノの近くのワイナリーを訪れた際、ワインを1本、2本、3本選んで入れられるギフトボックスの用意があったので、お土産用に何本か買いました。
お土産にするための良いラッピングなどがあると良いですね。昔ながらの風呂敷や地元の名産品とのコラボも素敵だと思います。
お土産としてその酒を本国に持ち帰ってもらうことで、そのお酒のみでなく土地の知名度も上がり、リピーターの再訪・新規顧客の開拓、地域活性化と売上の向上に繋がっていきます。
⑧公式InstagramやFacebookへのいいね!やフォローなどをしてもらう
せっかく参加者と繋がる機会を持ったのですから、それをツアー後にも繋げていきたいですよね。いわゆる”旅アト”に繋がるきっかけ作りです。
旅アトとは、旅行者が本国に帰ってから約1ヶ月くらいの期間のことを指します。楽しかったなぁという思い出に浸ったり、お土産を配ったり、撮った写真を整理してSNSに投稿したり…
オンラインで何か自然と繋がっているきっかけを残しておけば、知り合いに紹介してもらいやすくなりますし、今後も情報を定期的に送ったり目に留めてもらったりできるようになります。
チラシや掲示物等でフォローを促したり、「フォローすれば〇〇プレゼント」など何かメリットがあるようなものを実施しても良いかと思います。
⑨酒蔵ツーリズム開催後は良かった点と悪かった点を確認し、改善に生かす
開催後は、酒蔵ツーリズム参加者に直接話を聞いたりアンケートを行うなどして、感想を聞きましょう。
きちんと振り返りを行うことでツアーのクオリティは上がりますし、開催者のスキルもアップします。
良かった場合は何がよかったのか?
悪かった場合には何が悪かったのか?
悪かった点を次回改善するためにはどうしたら良いか?
気づいたことなども含めて主催者側の皆さんで話し合うことで、どんどん改善されていきます。
7.まとめ
外国人観光客の参加者それぞれにお酒の種類や味には好みがあると思いますが、現地の方が一生懸命作られているお酒は、どれも美味しく素晴らしいと私は思います。
特に生産者の方に実際に話を聞いて、生産過程を見学し、そのお酒をいただく……すごく贅沢な機会だと思います。
その土地ならではの体験や地元の人たちとの交流で、リピーターを増やし、更なる収益に繋げましょう!
そして、開催する酒蔵やワイナリーの方々にも、ぜひ外国人観光客との交流を楽しんでいただけたらと思います。
参加する側と開催する側、双方に有意義なツアーとなることを願っています!